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漢方医学概論Kampo medicine outline

(1)漢方医学とは何か

漢方医学とは何か

 漢方医学は、中国起源の伝統医学で、
 中国から直接あるいは朝鮮半島経由で伝来し、
 日本で独自の発達を遂げたものである。
 中国を起源とする伝統医学は、現在の
 中華人民共和国では中医学、韓国では
 車医学と呼ばれており、起源は同じながら、
 漢方医学とは異なった医学体系を形成している。
 歴史的に遡れば、漢方医学という呼称はそもそも
 存在しなかった。
 しかし、江戸中期に、従来の医学と体系を異に
 するオランダ医学が伝来し、オランダの漢字に
 よる当て字、和蘭、和蘭陀の略記「蘭」の宇を
 用いて蘭方と呼ばれる。
 こうしたことから両者を区別する必要性が生じ、
 中国を意味する「漢」の宇を当て、漢方という
 呼称が使われるようになったわけである。
 なお、「方」は元来、不老長生の術を指し、
 その意が転じて薬の処方も指すようになった。

(2)西洋医学との違い

西洋医学との違い

 西洋医学が自然科学を基盤に進化してきたのに
 対し、漢方医学は、古代中国の哲学思想と集積
 された臨床経験を基盤に発達してきたた め、
 両者は様々な点で異なる。
 まず第一に挙げられるのは、両者の基盤に
 由来する違いである。
 西洋医学が科学的、理論的であるのに対し、
 漢方医学は哲学的、経験的な性格を
 帯びている。
 また、西洋医学では、分析的な手法、
 見方により、最終的に病巣を局所化していくのに
 対し、漢方医学は、心身一如、つまり心と身体を
 1つの小宇宙として総合的に捉え、身体の全体的
 なバランスを図っていく。
 漢方医学には、患者さん各個人の病鹿を、
 心身両面から総合的に捉え、治療する全人的
 医療の考え方が内包されているわけで、
 それゆえに「個の医学」と呼ばれることもある。
 薬については、西洋医学では基本的に、単一
 成分で、精製された合成品が、漢方医学では、
 複合成分で、複数の生薬を組み合わせた天然品
 が用いられる。
 複合成分であるため、作用機序を解明しづらい
 ものの、作用はマイルドで副作用も少ないという
 特徴がある。

(3)医療現場での利用状況

医療現場での利用状況

医療現場での利用状況




 現場の第一線で活躍する医師たちは、漢方医学
 や漢方薬をどのように捉え、実際に活用している
 のか、『日経メディカル』のアンケート結果をもとに
 見ていく。
 まず、漢方薬の使用状況に関しては、現在
 使用しているが72.4%、過去に使用したことが
 あるが今は使用していないが13.6%を占め、
 全体の86%の医師が漢方薬の使用経験を
 有することがわかる。
 漢方薬の使用動機に関しては、西洋医学や
 西洋薬による医療に限界を感じ、その突破口
 として漢方薬を使用している医師が多いことが
 伺える。
 また、学会などで科学的なデータが報告され、
 医師が安心して使える環境が整ってきた、
 患者のQOL「生活の質」を高められる、といった
 理由も見逃せない。
 数はまだ少ないものの、薬剤費用の節減に
 寄与するという観点から漢方薬を評価する
 医師もいる。

(4)なぜ漢方医学なのか
(西洋薬の限界)


なぜ漢方医学なのか(西洋薬の限界)1

なぜ漢方医学なのか(西洋薬の限界)2

なぜ漢方医学なのか(西洋薬の限界)3

なぜ漢方医学なのか(西洋薬の限界)4


 それでは、漢方薬の使用動機」に対する回答の
 中から、その具体的な理由のいくつかを
 紹介する。
 まず、最も多くの回答が寄せられたのは
 「西洋薬による治療だけでは限界があるから」
 だった。
 西洋医学では、病名を特定できない場合に
 不定愁訴と診断する。
 不定愁訴は、的確な治療戦略が立たない時に
 下される診断名、と言い換えることもできる。
 一方、漢方医学は、病名の特定を目標とせず、
 不定愁訴であっても、所見、症状から総合的に
 判断して最適な漢方薬を処方する。
 したがって、西洋医学的には同一疾患、例えば
 慢性閉塞性肺疾患であったとしても、麦門冬藩、
 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)といった
 異なった漢方薬が処方される場合があるし、
 逆に、慢性閉塞性肺疾患、感冒といった異なった
 疾患に対して、同じ漢方薬、例えば麦門冬湯が
 処方されることもある。
 漢方では、前者を同病異治、後者を異病同治と
 呼ぷ。漢方医学は、西洋医学でいまだ原因を
 特定できない疾患に有効なことがある。
 補中益気湯は、比較的体力の低下した人が、
 全身倦怠感、食欲不振などを訴える場合に
 用いる処方であるが、
 例えば、慢性疲労症候群の患者に対し、補中
 益気湯を投与し続けると、疲労・倦怠感、徴熟、
 筋肉痛、集中力低下、思考力低下といった自覚
 症状を改善することが明らかになっている。
 漢方薬の薬理作用を科学的に探索・解明する
 試みは、まだ緒に就いたばかりである。
 今後さらに、西洋薬の限界を超える新しい
 薬効が見つかるものと期待されている。

(5)なぜ漢方医学なのか (QOL「生活の質」の向上)


なぜ漢方医学なのか(QOLの向上)1
注:
なぜ漢方医学なのか(QOLの向上)2

なぜ漢方医学なのか(QOLの向上)3

なぜ漢方医学なのか(QOLの向上)4


 次に、「患者のQOLを高め、全人的医療が
 できるから」が選択された理由を紹介する。
 QOLとは Qaulity of Life 一般的に「生活の質」
 「人生の質」,「生命の質」と訳されています。
 医療面では,ガン患者のターミナルケアに
 始まったQOLの考え方が,現在では長期療養が
 必要な慢性疾患のケアへ利用されています。
 筋ジストロフィーの患者さんを受け入れている
 国立療養所においても入院患者さんや
 在宅患者さんのQOL,つまり生活,人生を
 豊かにするために各職種の人々の努力が
 続けられています。
 まず、開腹大腸手術患者に対して、大建中渇
 (だいけんちゅうとう)を投与し続けた場合の
 排ガスまでの期間と術後入院日数の変化を
 見てみる。
 開腹大腸手術では、術後に腸管連動の麻痺が
 生じ、少なくともその期間分入院日数は延びる。
 しかし、図に示すように、大建中簿を投与された
 患者は、排ガス、術後入院日数とも有意に
 減少した。
 次に、インターフェロン/リベピリン(IFN/Rib)
 療法を行うC型慢性肝炎患者に対して、
 十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)を投与し
 続けた場合の効果を見てみる。
 IFN/Rib療法は、その有効性が実証されている
 反面、溶血性貧血などの副作用により治療を
 中断せざるを得ない場合がある。
 しかし、十全大補湯を同時投与すると、
 ヘモグロビン減少量、赤血球減少数が、
 ともに有意に軽減。IFN/Rib 療法の継続可能性
 を高めることが明らかになった。
 漢方薬は、術後の早期退院、西洋薬の副作用
 軽減など、患者さまのQOL「生活の質」を向上
 させるうえで大きな可能性を
 秘めているのである。

(6)なぜ漢方医学なのか(生活習慣病の進展抑制)


(6)なぜ漢方医学なのか(生活習慣病の進展抑制)1

(6)なぜ漢方医学なのか(生活習慣病の進展抑制)2

(6)なぜ漢方医学なのか(生活習慣病の進展抑制)3
(6)なぜ漢方医学なのか(生活習慣病の進展抑制)4


 次に、「生活習慣病などに疾病の進展抑制が
 期待できるから」が選択された理由を紹介する。
 漢方医学は、健康と病気の間の状態を未病と
 いう概念でとらえ、病名を特定できない段階で
 あっても対処法があると考えることから、
 養生医学、予防医学と呼ばれることがある。
 生活習慣病は、自覚症状がほとんどないまま
 徐々に進行するため、体質改善を含む
 養生医学、予防医学は、生活習慣病患者の
 増大抑制に必要不可欠である。
 そうした理由から漢方医学が注目を集めている
 わけである。
 もちるん漢方医学は、生活習慣病に対する
 治療医学としての側面も併せ持っている。
 例えば、肥満症の女性患者に対し、食事療法、
 連動療法と、防風通聖散(ぽうふうつうしょうさん)
 の長期投与とを併用した場合の効果について
 見てみると、
 防風通聖散投与群で基礎代謝量は高値で
 安定し、その結果体重が、時間の経過とともに
 減少し続けていることがわかる。
 高齢化の進展に伴って生活習慣病の進展抑制
 が重要な課題として浮上する中、漢方薬は
 こうした課題を解決するうえで重要な役割を
 果たすと考えられている。

 最後に、「医療経済的にみて薬剤費用の節減に
 なるから」が選択された理由を紹介する。
 かぜ症候群における調査結果を例に挙げて
 見てみる。
 西洋薬のみ、西洋薬と漢方薬の併用、
 漢方薬のみの3群に対し、薬剤数、治療期間、
 それに対する平均薬剤費、平均総薬剤費を
 比較すると、すべてにおいて漢方薬のみを
 適用した群が優れていることがわかる。
 次に、療養型病床群で、西洋薬のみ、あるいは
 西洋薬と漢方薬を使用した場合の薬剤費の
 変化に関する調査結果を見てみると、
 1日1人あたりの薬剤費は、西洋薬のみが
 1,394円、併用が741円で、金額にして653円
 減少した。
 減少した薬剤費の中で、最も大きな割合を
 占めるのは抗生剤である。療養型病床群では
 高齢者の割合が高いため、
 漢方薬の併用で免疫能力が高まり、感染症の
 雇患率が低下した結果と考えられる。
 現行の医療は、医療経済的な観点からも
 大きな課題を抱えており、漢方薬はそれを
 解決する突破口のひとつと期待されている。

 ツムラ「漢方スクエア」
 秋葉哲生慶応大学客員教授、
 小曽戸洋北里研究所教授 監修の
 「エッセンシャル漢方医学」より